こだわり⑨ 健全な圃場を保つ、全ての始まり秋冬作業 の 3回目

⑨-③ 耕起作業 ~天地返し~

 前項の通り、せっかくの早期耕起なので『ただ早いだけではもったいない』と更なるこだわりが生まれてきます。

 

 それは耕し方です。一般的な耕起作業は耕運機の爪で土をかき混ぜる方法(『ロータリー耕』と言います)ですが、当家では『天地返し』と言われる系統の方法で耕起を実施します。

 地中深くにあった土を表面に、地表にあったわらなどを逆に地中深くに、ひっくり返すように耕していくのです。一般的な『ロータリー耕』は土を細かく粉砕してかき混ぜますが、『天地返し』は土を粉砕することなく『ざっくり、ゴロゴロ』と裏返していきます。細かく粉砕すると雨などが降った際にすぐに『土が締まってしまい易い』のに対し、『ざっくり、ゴロゴロ』耕していれば、雨などが降っても『土が締まりにくい』ので、『乾土効果』が得られます。

 

 この耕し方で耕すと地中深くにあった『踏み締められがちな土』を地表に出して、冬場に『寒にさらす』ことができます。『寒にさらす』と薬品を使用したり、田を焼いたりしなくても、ある程度の土の殺菌ができます(これも投薬削減に繋がります)。

 また『ざっくり、ゴロゴロ』は多くの隙間があり乾燥がよく進み、締まった土の部分がもろく、崩れやすくなっていきます。

 そしてこの多くの『隙間やくぼみ』は多種多様な生き物の住処となり、そのうちミミズなどの小動物が、『元々締まっていた土が乾土効果でもろくなった所』に入り込んでいってくれて、さらに土を蘇らせ、勝手に耕してくれます。

 

 自然や生き物の力は偉大です。私は自然や生き物たちが活動しやすい状況を作るために、タイミングを見計らって作業をしているだけなんです。大部分を自然や生き物にやってもらっているので、ある意味『省力化』と思っています。

 

 また耕起前には山林や竹林で採取した落ち葉等で培養した菌を撒きます。これも『自然の力の利用』です。こうすることで地中に埋め込まれていく『わらや稲株、根』などがより早く分解され、また菌の活動による熱で適度に保たれた温度が、また多くの生き物に住みやすい、活動しやすい環境を作っていってくれます。

 

 またこの耕し方にはさらに意味があります。次回はその意味についてお話しさせていただきます。

 

 

 

 

★稲作用語★ 米粒用語

『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。

『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。

『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。

『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。

『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。

『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。

     精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。

『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)

    その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。

 

 ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。

★稲作用語★ 農作業用語 その他

刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。

『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。

登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。

⑨-③ 耕起作業 ~天地返し~