こだわり⑨ 健全な圃場を保つ、全ての始まり秋冬作業 の 1回目

⑨-① 土作りの流れ

 『刈取り当日の田起し』、は何のためなのか?

 

 まずは少し難しいですが、田んぼの中の物質の流れを考えてみましょう。

 植物が光合成で作り出してくれる栄養は、ほとんどが3大栄養素といわれる『炭水化物(デンプンなど)』『タンパク質』『脂肪』です。この中で、『炭水化物』と『脂肪』は原料が『空気中の二酸化炭素』と『水』なので、せいぜい日当たり良く、風通し良く、水をちゃんとやっていれば何とかなります。

 

 ところが問題は『タンパク質』です。細胞の壁などが『タンパク質』でできているためどんな植物でも、動物でもその『健全な体を作るにはどうしてもタンパク質が必要』なのです。

 ところがこのタンパク質には『窒素が含まれている』ため原料として窒素を含む『肥料成分』がどうしても必要になります。『窒素』は空気中の8割も占めているのに、残念なことに空気中の窒素を一般の植物は使うことができません(例外はレンゲなどの『マメ科植物』)。なので全て根から水に溶けた形で吸収させることになります。

 

 どのくらいの量必要なのか?単純に考えると毎年同じ量の収穫を迎えるためには、『稲刈り直前の田んぼに生えている稲の体全体(根・葉・種)の中に入っている全タンパク質、に含まれる窒素』(すごい量です)『次の年の田植えまでに(遅くとも稲刈りまでに)田んぼの中に用意してやらないといけない』ということになります。

 

さあ大変です! どうやって用意します?

 

 一番手っ取り早いのが、化学物質で窒素を含む吸収の良い物質を投入する(化成肥料の投入)ということになります。それ以外となると、『動物の体』『動物の排泄物』『植物の体』に含まれる『窒素』を投入(有機肥料の投入)となります。こうして『施肥』という作業が必要になるわけです。

 

 しかしここで『化成であれ有機であれ』それらの肥料を大量投入することに疑問を感じます。

 

そもそも『施肥量を減らす方法』はないの?

 

という素直な思いが出てきます。

とにかくより良い形で『自然に近い循環型農業が当家の理想』なので、無駄に資材や薬品を大量投入するということに抵抗があります。

そこでもう一度基本に戻って単純に考えました。(単純な考えが理想に一番近いのです。ただ理想を実現するには数々の困難が待ち受けておりますが・・・)

 

『田んぼから持ち出した物の分だけ、補ってやればいいんじゃない?』

 

 田んぼから持ち出したものと言えば、『米』です。さすがに米を持ち出すのをやめるわけにはいきませんから、『持ち出した米に含まれていたタンパク質の分だけ足してやる』というのが、『最も施肥量を少なくする方法』となるはずです。言うのは簡単ですが、実はこれがそんなに簡単でもなく・・・でも理想・目標がはっきりしたので後は努力するしかありません!

 

 次回は理想を現実にしていくためのお話です。

 

 

★稲作用語★ 米粒用語

『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。

『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。

『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。

『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。

『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。

『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。

     精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。

『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)

    その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。

 

 ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。

★稲作用語★ 農作業用語 その他

刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。

『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。

登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。

⑨-① 土作りの流れ