こだわり① 究極のゆっくり乾燥 の 6回目

①-⑥ 乾燥作業は一年の集大成

 これまで5回にわたって乾燥作業における当家のこだわりについてお話させていただきましたが、今回は「こだわり① 究極のゆっくり乾燥」のいよいよ最終回。

 

 どうぞ最後までお付き合いください。

 

 「①-4 意外なムラの素」の<2>でお話したようなムラが生じるのは、そもそも1台の乾燥機に搬入する回数が複数回にわたるためです。当家では『こだわり②』にも示します『余裕の刈り取り』の実施により、ほとんどの場合搬入する回数を1回にし、その他各種工夫によりトラックに積んだ搬送用のグレンタンク内の籾の中のムラの軽減にも努めています(詳しくは『こだわり②』で)。

 

 「①-3 こだわりの36時間乾燥」の(※)、『乾燥機から直接籾摺り機への投入』について乾燥ムラの原因と書きましたが、これは乾燥機からの籾の排出速度が籾摺り機の作業スピードをはるかに上回るため、籾摺り機に入りきらなかった籾が再度乾燥機内を循環するようになっていることで、籾摺り作業をしている間の時間ずっと、実に多くの籾が乾燥機内を無駄に循環し、外気による送風(乾燥機は排出作業の際、内部のほこり等を機械の外に排出するために結構強い風が常時噴出されているのです)にさらされ、どんどん乾燥が進んでいくのです(雨の日等は逆にどんどん湿っていきます)。

 

 とにかくせっかく均一乾燥をしたとしても、これでは台無しです。当家の地域は小規模農家が多いため数百件の農家のうちに籾貯蔵タンクを所有している農家は数件しか存在しません。しかし当家では、実に最大で1週間分の籾を貯蔵できる籾タンクを用意しており、ごく短時間で乾燥機からタンクへ乾燥終了籾を移動させています。このことにより、乾燥機の稼働可能時間を増やすこともでき、長時間乾燥に向けた時間的な余裕を生み出しています。また貯籾タンクがあるおかげで、籾摺り時間を刈取り作業の前に実施しなくてもすむため、極端な話、稲刈りをしている最中でもまだ乾燥機はゆっくりと乾燥作業をしていても大丈夫(1回目の搬入までに空にすればよい)ということになり、

 

 最大で『45時間乾燥』

 

ぐらいまでのゆっくり乾燥をする時間を確保することが可能になるわけです。

 

 以上各種のこだわり操作・作業の実施で、

 

『天日干しよりも高温にさらさない』、

『天日干しよりもストレスを与えない』、

『天日干しよりも均等に乾燥』を実施して、

『一矢報いたい』

 

と取り組んでおります。

 

『勝ってなくとも、負けてない』

 

そんな米ができたかどうか、それは皆様にお確かめ頂ければと思っております。

 

とにかく

 

乾燥作業は一年の集大成。

 

 他家の農家は言うに及ばず、家族にさえも『どうかしてるわ』と言われる程の細部にわたるこだわり(これでもまだまだ書ききれていないのですが・・・)で、ほぼ寝ずの番をしながら実施をしております。

 

 

 本当に長い文章をお読み頂きありがとうございます。次回からは、『こだわり② 適期を逃さぬ余裕の刈り取り~ トレーサビリティーの実施 ~』についてのお話になります。こだわり①を実施するための工夫を数回にわけてゆっくりお話しさせていただきたいと思っておりますので、次回からも引き続きお付き合いの程よろしくお願いいたします。 

 

 

 

★稲作用語★ 米粒用語

『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。

『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。

『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。

『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。

『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。

『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。

     精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。

『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)

    その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。

 

 ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。

★稲作用語★ 農作業用語 その他

刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。

『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。

登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。

 

①-⑥ 乾燥作業は一年の集大成