こだわり④ 生き物との共存を考えた田植え前作業 の 2回目

④-② 「施肥」のベストなタイミングは?

(代掻きの風景)

 今回は『施肥』についてお話しさせていただきます。肥料を撒くベストなタイミングはいつなのか?

 除草剤をなるべく使わない当家のもう一つのこだわりについてのお話です。

 

 子供の頃、『誰に肥料をやってるの?』って素朴な意見を言ったことがあります。

 どういう意味か?

 

 一般的なまとめ作業をすると、『代掻き』『田植え前の2週間』『施肥』『その前の1週間』。早い田では実に『田植えの3週間前』に肥料 を撒いているのです。当然肥料は雑草にとっても『美味しいご飯』。『施肥』から『田植え』までの時間が長ければ長いほど、『無駄に雑草に肥料をやっている』様なものなのです。そんなタイミングで生えた草は耕して鋤き込んでもすぐには腐りません。田植え後しばらくして腐り始め、稲の生長に有害なガスを発生させるだけ、それが嫌ならまた除草剤。(全くなんてこった!)

 本当は稲に肥料をやるはずなのに・・・

 

やはり『施肥』も本当は『田植えに近い方が良い』のです。

 

 そこで当家の結論です。『こだわり③』で、ただ3週間かけて田植えをするのではなく、なぜ田植えは『3日に1度』なのか?『3日に1度』の間の日が『代掻きの日』『施肥の日』なのです。田植えの時期には以下のような毎日が続きます。(A・B・C・D・・の圃場で) 

 なんともめまぐるしい毎日になります。天候等に悩まされることもあります。雨の中の作業なんてはっきり言って当たり前に近いです。

 

『できる範囲でより良いものを作りたい』

 

 その全てを叶える為には、雨なんかに負けてられません。

 

 特に『施肥』は無駄な大量施肥を抑えるためにも『田植えに近い方が良い』の最終系で田植え機による側条施肥という施肥を併用しております。一般的には『代掻き前の一斉施肥』『田植え機による側条施肥』かいずれか一方のみを行う方がほとんどですが、それぞれにメリット・デメリットがあり当家ではそれぞれを補うべく、作業はより煩雑になりますが併用を実施しております。

 

 『田植え機による側条施肥』は植えた苗のすぐ横に肥料を投与しますので、スタートダッシュには効果的です。しっかりとしたスタートダッシュが切れるなら、『より遅い田植えが可能』になり(『こだわり⑥』に繋がります)、また雑草との競争にも勝利しやすいので、除草剤の量をどんどん減らしていけます。また当家では『こだわり⑦』に示すような特殊な植え方をしているため、側条施肥はさらに無駄の少ない施肥方法となります。

 

 しかしこの投与法では資材は浅い部分にしか投与できません。苗が小さいうちはそれが良いのですが、だんだん根が地中深くに大きく張って来てくれた時に、そこには肥料成分がないのです。浅い部分にある成分は田んぼの水の流れと共に流されやすく、やはり無駄な過剰投与にも繋がります。この方法は前半向けです。

 

 一方『代掻き前の一斉施肥』では田の奥深くにまで肥料成分を混ぜ込むことができるので、後半まで長い時期をカバーする意味ではとても効果的です。しかし全体に薄く伸ばした形になりますから、田植え直後の苗に対しては『側条施肥』のようにピンポイントには効きません。ですからスタートダッシュは期待できず、苗のない部分においては根が伸びていくまでは、『雑草の餌』になってしまうのです。

 

 以上のような結果から当家の結論は、それぞれの施肥量をかなり抑えながら両方を併用するというものになりました。手間は2倍かかりますが、効果も大きいのです。

 

でもこれだけなら、みんな簡単にできるのでは?

 

 なかなか、当家と同じような作業方法がスタンダードにならないのは、実際にこれを限られた通常の機材で実施すれば、とてつもない手間がかかるからなのです。

 次回はその理由についてお話させていただきます。

 

★稲作用語★ 米粒用語

『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。

『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。

『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。

『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。

『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。

『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。

     精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。

『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)

    その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。

 

 ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。

★稲作用語★ 農作業用語 その他

刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。

『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。

登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。

④-②    「施肥」のベストなタイミングは?