★今週の新着情報★

■■最後に■■

 本当に、長々とお付き合い下さりありがとうございました。最後に言い訳でも、変な『かばい』でもないのですが、文中に出てきた一般の生産者様の作り方に対し、当家では同じようにはできないものの、決して『否定』をしているわけではありません

 

 私、只今48歳(2018年時点)です。日本の農業人口の年齢別統計を取った際、『世間では十分に中年である48歳』が、農業人数比率では『若い方の10%辺りにいる』のです。恐ろしい話ではありませんか? 『本当に駆け出しのひよっ子』です。28年耕作してきてもまだまだ『若造』です。農業従事者の年齢層的な中心が70歳前後なのです。その年齢の頃、そしてその後に私が今と同じことができるかどうか? 本当に疑問です。だから一般的な方々が、当家からはかなりかけ離れた価値観で生産されているのは、決して『手を抜いている訳ではない』ですし『サボっているわけでもない』のです。まあ、中には怠けておられる方もおられるかもしれませんが、それでさえ『耕作放棄地』『荒廃地』にせずに耕作して下さっているのです。また年齢的、体力的に問題のない方々でさえ、産業としての生き残りをかけて、一生懸命『価格競争に立ち向かい、コスト削減、そして効率化』等々をがんばっておられるのです(政府の方針がそちらへの舵取りをしている訳ですし、大半の方がそちらを向かれていることは仕方ないことなのです)。

 

 みんな当家とは方向性が違うだけで、本当にどの生産者もがんばって生産しております。農業従事者の高年齢化も、若い人にとって稲作が魅力の少ない産業になっている為であり、また経済的にきついという現実から、ある程度生活に余裕のできた退職後等のリタイア組の方でないと生計を成り立たせるのが困難と言う現実から生じたものでもあります。そうした現状により、高年齢であっても経験が浅くキャリアが低かったり、規模も小さいなどの理由から、よほど強く先導する者がいなければ政府主導の方針に振り回されてしまうのはしょうがないのかもしれません。

 

 稲作以外の食料生産者も皆同様だと思いますが、世の中が『低価格』『価格競争』のみに走ってしまえば、『効率化』等々が横行し、『国土的に大規模化を実施し易い海外製』が幅を利かせ、現在の日本のように食料自給率が40%を軽く割り込み改善の兆しも見せない状況になります。『低価格』『価格競争』が『悪』ではありません『低価格』『価格競争』のみになることが『悪』なのです。誰しも『より良いものをより安く』買いたいことは当然のことですし。

 

 そんな時に『海外製の安い電化製品と国産の高い電化製品のどちらを選ぶ?』のようなことを考えてみて下さい。『より安い』を追求するもよし、『より性能が良い』を追求し高値の物を選択するもよしです。皆さんは『自由に選択できる』のです。なぜなら電気屋さんには、低価格から高性能までの色々な商品が並んでいるからです。これが理想の市場です。だから自由に選択できます。その結果として『高価だけれども高性能』な製品を追求し製造する会社も産業として生き残っていけますし、それを新たに目指すものもどんどん出てきます。しかし今、

 

『米は選択しにくい市場になってしまっている』

 

のです。大手スーパーなどで『大きな米売り場』があったとしても、『選べるのはせいぜい産地品種のみ』ではありませんか? 

 

 これまで書いてきた通りに『同じ生産地(隣り合った田んぼ)で、同じ日に、同じ品種を作付けし、同じ日に収穫しても、全く違った米ができてくる』のです。本当に大きな差です。

最近『イチゴ』を買う際、パックの上のビニールに産地品種以外でかなり多くの場合『生産者名』が書かれるようになりましたね? やはりああいう取り組みが必要な気がします。

JA様等々がコスト削減の一環、効率化を進めるが故に、大きな集積所に米を集めて混ぜこぜにされてしまうことが良くあります。そうなってしまっては『○○様 作』ではなく『○○産コシヒカリ』のような書き方しかできなくなるのです。これでいいのか?

 

『米だって色々選べるようにしたい』

 

と私は考えています。

 

 何を食べる時だって、電化製品を選ぶ時と同じように、自由に選択したいのです。『安いお米でいいからとにかくたくさん買いたい』という方もおられますでしょうし、『ちょっとでいいから本当に美味しいものを食べたい』という方もおられると思います。

そういった時に電化製品のように『違いを理解し易い市場』『産地銘柄以外の違いを選択ができる市場』になっているのでしょうか? 一部、健康に特化した『胚芽米』『発芽玄米』等の市場は生まれてきたような気がします。

 しかし『肝心の味による選択』は? ほぼできていないと思います。『本当に美味しいお米はどこに売っているのでしょうか?』これって結構難しい質問でしょ? ご存知の方がどれくらいおられるのか? これが米の市場の現状なんです。

 

 食品の売り場ですし、みんなが「美味しい」って書きたがりますからね? だからみんなにしっかりと『味の違いを表示』『味の違いを証明』できるちゃんとした基準が必要なのです。

その一環とし当家では『米・食味鑑定士』という資格を複数名取得、1枚1枚の田でできたそれぞれ違う米をちゃんと区別をし、その味の違いを鑑定してお客様の好みに合わせて販売させて頂くという取り組みを実施しています。

 

 全国に存在する『米・食味鑑定士』が中心となり、米の味を責任を持って『見える化』し、『米の味についても自由に選択できる市場を確立』していかねばなりません。そのための取り組みの一環が『食味コンクールの開催』であり、その上位者が最近よくメディアにも出てこられるようになりました(石井稔さん,遠藤五一さんなど、テレビで何度も取り上げられておられますし、見かけられた方も多いかもしれません)。

 

 少し世の中の関心が良い方向に向き始めてきたものと思われます。また『コンクール好成績の米のみを扱うブランドショップ』なども出てきました。『見える化』『味を自由に選択できる市場の確立』に向けてとてもよい取り組みと思われます。しかし大型家電ショップが全国あちらこちらにあるのと同様に、スーパーの米売り場も全国のあちらこちらにあるにもかかわらず、現時点では美味しい米を味で選択できる店はほぼ無いのです。

 

 この状況を変えるために、少し視点を変えたいと思います。

 何を作るにしても、『良いものを作るには手間やコストがかかります』。意識の高い生産者はより良いものを作るが故に、農業の『業』を成り立たすためには、余分にかかった手間やコストの分をどうしても料金に上乗せせざるを得ません。しかしその『お茶碗一杯で数十円』の高値を十分に納得して頂けるようなものを作るべくがんばって生産しております。

 この差がどの程度のものなのかを多くの消費者様にご理解頂く取り組みをすることが、市場を変える第一歩ではないかと考え、最後を料金の話で締めくくるのもなんとなく抵抗があるのですが、あえてこのテーマを最後に書かせて頂きます。できるだけ消費者様が『比べる』『選ぶ』をして頂く際の資料となるように書かせて頂こうと思います。

 

1kg ¥300円の米 お茶碗一杯 約18円(激安系、標準より6円安い)

1kg ¥400円の米 お茶碗一杯 約24円(標準的)

1kg ¥500円の米 お茶碗一杯 約30円(標準より6円高い)

1kg ¥600円の米 お茶碗一杯 約36円(標準より12円高い)

1kg ¥800円の米 お茶碗一杯 約48円(標準より24円高い)

1kg¥1000円の米 お茶碗一杯 約60円(標準より36円高い)

 

 比較しやすいようにかなりアバウトな料金ですが、一応一般的な米売り場に並ぶ商品の価格、また一般的な分析数値として使用されている、お茶碗一杯分に使用する米の量(炊飯前の米換算)で60g(1合でお茶碗2杯半,2合でお茶碗5杯)として計算しております。

 お茶碗の大きな方、小さな方はその辺を少し考慮して見て下さい。

 

『1kg ¥400円前後の米』10kg¥3980-みたいな米です。

              (スーパー等でいくらでも目にすることができます)

『1kg ¥300円前後の米』10kg¥2980-みたいな米です。

             (特価や安売り系ブランドの米でそれなりに目にします)

『1kg ¥500円前後の米』10kg¥4980-みたいな米です。

              (↑結構高価に感じます。たまに目にするぐらいです)

     産地銘柄だけでこの値段で売っていると、きっと有名どころの米でしょう。

     でも実際はお茶碗一杯で10円も高くないのです。

     5人家族が、一食一杯ずつ食べるなら、家族全体で

     一食当たり30円高いだけでかなり良いお米をずっと食べられます。

『1kg ¥600円前後の米』10kg¥5980-みたいな米です。

              (↑かなり高価に感じます。なかなか売っていません)

     産地銘柄だけでこの値段なら、間違いなく超一級の産地銘柄です。

     でも実際はお茶碗一杯で10円ちょっと高いだけ。

     5人家族が、一食一杯ずつ食べるなら、家族全体で一食当たり60円高く

     夫婦2人が、一食一杯ずつ食べるなら、一食当たり25円程高いだけです。

 

 ここから先は、もうスーパーには、なかなか売っていないレベルです。

 百貨店のこだわりコーナーなどで売っているブランド米かこだわり生産者の名前入りの米などがこのランクの米でしょう。

 多分袋もそんなに大きくないものが多いです。

『ちょっとでいいから、良い物が食べたい!』と言う人にお勧めです。

 

 

『1kg ¥800円前後の米』5kg¥3980-みたいな米です。

     5人家族が、一食一杯ずつ食べるなら、家族全体で一食当たり120円高く

     夫婦2人が、一食一杯ずつ食べるなら、一食当たり50円程高いです。

『1kg ¥1000円前後の米』2kg¥1980-みたいな米です。

     5人家族が、一食一杯ずつ食べるなら、家族全体で一食当たり180円高く

     夫婦2人が、一食一杯ずつ食べるなら、一食当たり75円程高いです。

 

 はっきり言って『袋に入った米』として買う際に感じる感覚では『おお~』と思うくらい高いかもしれません。

 しかしよく考えて下さい。このクラスになると米としては間違いなく

 

『日本の、いや世界の最高峰のレベルの米です』

 

(まだまだ高値のものもありますがそれはもう特別なブランド化されたものと思われます:

因みに数年前ギネスに認定された世界最高米(東洋ライス)は850g入り¥10000円以上で販売され、毎年すぐに完売しています)。

 

 とにかくこのような価格帯の米のランクは、肉に例えるなら

 

『国産黒毛和牛A5ランク』のようなもの

 

か、希少性で言えばさらにもっと上のような上質の米であることは間違い無いのです。

『贅沢かもしれない』ということですが、

 

『そんな贅沢を毎日、毎食したところで、この程度の値段の差』にしか過ぎない

 

と言うことを解って頂きたいと思います。

 

 きっと『普通のステーキ』を『国産黒毛和牛A5ランクステーキ』に1回変える価格差で1ヶ月間ずっと『毎食、世界の最高峰のご飯が食べ続けられる』と思います。

 

 このことをどう感じられるかは人それぞれです。『米は高いと思っていても、結構安いもんだから買って下さい』と言っている訳ではありません。電化製品のように自分の意思で選んで頂きたいのです。今まで単純に、こんな米に目も止めなかった方も、少し立ち止まってみて頂けたら幸いです。

 

『スーパーに積み上げられている物の中から選ぶだけだった方』

 

 少し、他にも目を向けて頂けたら、米の市場は必ず変わってきます。

 ご苦労をおかけしますが消費者の皆様の行動・ニーズが小売業者の意識を変えさせ、『選びやすい市場へと変化させてくれる』のです。

 

 その中で本当の意味で『自由にあなたにあった最高のお米を選択して下さい』

 きっと消費者の皆様のその行動が、我々『がんばる農家』を日本に増やさせ、『本当に美味しい、そして安心安全な日本のご飯』を子供たちに食べさせてあげられる世の中に変えていってくれると信じております。

 

 足掛け3年にもわたる、長いこだわりの紹介になってしまいました。

 長い文章にお付き合い下さった皆様、本当にありがとう御座いました。

 これからもより良いお米をお届けできるように一生懸命がんばります。

 

 

京都辻農園 辻典彦

 

皆様の御支援のおかげで

大変な年ではありましたが

2020年も良い年でした

2021年も精進致しますので

どうぞよろしくお願い申し上げます

 

★稲作用語★ 米粒用語

『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。

『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。

『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。

『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。

『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。

『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。

     精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。

『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)

    その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。

 

 ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。

★稲作用語★ 農作業用語 その他

刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。

『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。

登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。