こだわり⑦ 太陽をいっぱい浴びる植え方 の 2回目

⑦-② 『風通しの良さ』は『田の免疫力』

 前回、当家の特殊な植え方についてお話しましたが、この思い切った空け方は通常の粗植にはない『風通しの良さ』も生み出します。

 

 子供の頃、『夏の草取り』が一年で一番嫌な仕事でした。長く伸びた稲の中に身をかがめ草を取っていると『むん』っとした『湿度』『こもった暑さ』、息苦しい、そして暑苦しい、本当に苦しい限りでした。ところが今の当家の田は、上からの直射日光を麦藁帽子で防いでやれば、『なんと心地良いこと』でしょう。必ず風が吹き抜けるので汗を乾かしてくれて、昔の記憶が嘘のようです。

 

 気持ちが良いのは人間だけではありません。稲だって気温が上がりすぎて熱がこもると良くないのです。風通しの良さで稲の温度を下げてやることができ、快適な環境を作ってやれます。

いわゆる『米どころ』の雪解け水のような冷たい水を入れてやる(『水冷』とでも言いましょうか)ことが出来ない分、当家の稲たちは『心地よく吹き抜ける風』で(『空冷』ですね)暑さをしのがせてやり、『米どころ』に負けじと頑張ってくれています。

そうしてどんどん光合成をするための『新しい新鮮な空気が常に全体に行き渡る』おかげで、『日当たりのよさ』『こだわり⑥』の『適期作付け』も功を奏し、最近流行(?)の『高温障害』に悩まされることもなく、元気にすくすく育っていってくれます。

 

 そもそも風通しが悪いと病気の繁殖を一気に加速させ、急激な伝染を引き起こします。田んぼの中はいつだって周りの田などから病気の素は飛んでくるもの。人間界と同じです。でもそれを繁殖させるかどうかは免疫力にかかっています。

 

『風通しの良さ』は『田の免疫力』

 

のようなもので、この植え方をしてから病気に悩まされたことはほとんどありません。

 

 つまり、通常夏場に撒布する

 

『病気防止の農薬も使わなくて済む』

 

のです。なんと良いことばかりでしょう。

 あと心配なのは収穫量です。

 そもそも『苗作り』の際、『強い苗』を作るため、苗箱に籾種を粗く撒きました。ですので『田植え』の際も苗は『1株平均2本植え』と極めて薄植えです。田植え直後の田を見てみると、『植わっているのか、雑草が生え始めているのか、分からない』とよく言われます(自分でもいつ見ても大丈夫かな?という気になるくらいです)。

 そんな『産毛のような田んぼ』からスタートして、さらにこの植え方で、株数も通常の8割以下。さぞ収穫量は低かろうと思いきや。何の何の。通常より安定した収量が得られています。なぜでしょう?

 

まずは『株の張り』が違います。(1つの株に実る茎・穂の数が多い)

 

一つ一つの『穂がたわわに実っています』(1本の穂の籾数が多い)

 

とにかく『健全』で『不良米も少ない』のです。(1粒1粒がしっかり実る)

 

 よくよく考えたら当たり前のことかもしれませんが、一般的に植物を栽培する際って『まびき』をしますよね?そうしないとみんなで栄養分や日光の取り合いをして、ひ弱な物ばかりがたくさん出来てしまい、良質のものは少なく、粒ぞろいも悪くなります。お米だって同じことです。

 

 密集して植えると、ひ弱な、不健全な、質の悪い、粒ぞろいの悪い物が増えるという『ごく当たり前のイメージ』通りのことが言えるのです。かつて一般的に田植え後に『補植』(うまく植わらなかった場所にもう一度植え直しをする)という作業をしておりました。当家では今でも『草取りがてら』に『補植』作業で田に入ります。しかし当家での作業内容は、他家とは一風変わっています。父の代からずっと当家では、『多く植わりすぎた株を引き抜く』作業をするのです。まさに『まびき』です。稲作で『まびき』をするという方にはまだ会ったことがありませんが、『稲だけまびきをしない』なんておかしいと思いませんか?やっぱり『稲だって同じだという結果が出た』のではないかと思います。

 

そんな加減で、田植え後、夏にかけて人に笑われていた田は、秋には変貌を遂げます。

 

 

 まあ↑こんな感じでしょうか。『たわわ』に実った両サイドの稲たちが、植えずに空いていた1条の隙間を埋め、空間が見えなくなります。通常より『施肥量も少ない、農薬使用量も少ない』でもこの実り。『大地の力』『太陽の力』『動物たちや自然の力』を十分に頂いた結果です。

 

これぞまさに『健全の証』

 

なのです。そしてこうなったらもう誰も笑いません。皆が驚き、どうしたらこんなに良くできるの?と聞きに来る人も多いです。なかなか真似をする人はいませんが・・・。

 

 こだわり⑦は今回で終了です。次回からは、こだわり⑧、均一で健全な生育を可能にする、『究極の溝切り』についてお話させていただきます。

 

 

★稲作用語★ 米粒用語

『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。

『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。

『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。

『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。

『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。

『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。

     精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。

『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)

    その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。

 

 ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。

★稲作用語★ 農作業用語 その他

刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。

『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。

登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。

⑦-② 『風通しの良さ』は『田の免疫力』